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社会福祉協議会がAIで変えられる業務|相談記録と広報と貸付の3領域から

対象:社会福祉協議会の事務局長・管理職・企画担当最終更新:2026-10-17著者:合同会社サン 代表 菅野 竜輔

社協が生成AIを入れるなら、広報から始め、次に相談記録の要約へ進み、生活福祉資金の貸付では可否の判断に使わず、案内文と書類の確認に限って使う。この順番がいちばん無理がありません。扱う個人情報の重さと、AIの誤りが住民に及ぶ影響が、広報、相談記録、貸付の順に大きくなるからです。この記事では、3つの領域でAIに任せられることと人が持ち続けることを比べ、個人情報保護委員会の注意喚起と厚生労働省の問答集から引ける線を示したうえで、事務局長と理事会が始める前に決めておく5つのことをまとめます。

社会福祉協議会がAIで変えられる業務|相談記録と広報と貸付の3領域から の要点をまとめた図(合同会社サン 福祉DX お役立ちブログ)
この記事の全体像

入れる順番は、個人情報の重さで決める

社協が生成AIを入れる順番
最初に 広報下書きの大部分を任せられる。個人情報は原則として入れない
次に 相談記録記号に置き換えてから要約まで。見立てと方針は人が書く
限って使う 貸付可否の判断に使わない。案内文と書類の確認の一覧だけ
広報、相談記録、貸付の順に、入る個人情報の重さとAIの誤りが住民に及ぶ影響が大きくなります。

社協の仕事のどこに、AIが入る余地があるのか

社会福祉法第109条は、市町村社会福祉協議会を、地域福祉の推進を図ることを目的とする団体と定め、行う事業として、社会福祉を目的とする事業の企画及び実施、社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助、社会福祉を目的とする事業に関する調査、普及、宣伝、連絡、調整及び助成などを挙げています。

この条文を事務局の毎日の仕事に置き換えると、その多くが文章を書く仕事だと分かります。相談を受ければ記録を書き、住民の参加を呼びかけるには広報紙と募集の案内を書き、助成や貸付では申請の案内と書類の確認をします。生成AIは文章の下書き、要約、言い換えが得意なので、社協の仕事とは相性がよいと言えます。

一方で、社協の仕事は住民の暮らしの困りごとに直接触れます。相談の中身には、家族の事情、病気や障害、収入や借金といった、外に出てはいけない情報が含まれます。どの仕事にAIを入れるかは、便利さだけで選ばず、入れる情報の重さと、AIが間違えたときに誰が困るかで決める必要があります。

相談記録、広報、貸付のどれから始めればいいか

3つの領域を、AIに任せられること、人が持ち続けること、入る個人情報の重さで並べると、次のようになります。

領域AIに任せられること人が持ち続けること入る個人情報
広報広報紙の記事の下書き、ボランティア募集の文案、やさしい言葉への言い換え、行事の告知文載せてよい写真と名前の確認、事実と日付の確認、出してよいかの決裁原則として入れない
相談記録聞き取りメモの要約、記録の様式に沿った整理、引き継ぎ文の下書き何を聞き取ったかの事実、見立て、支援の方針、記録の確定記号に置き換えて入れる(法人が認めたサービスだけ)
貸付制度の案内文、必要書類の確認の一覧、償還の案内の文案相談の聞き取り、貸付の可否の判断、償還の相談への対応入れない(判断の材料をAIに渡さない)

表の上から順に始めるのが、事務局にとって無理のない入り方です。広報は個人情報をほとんど入れずに済み、間違いがあっても出す前の確認で止められます。ここで職員がAIの癖、たとえばもっともらしい誤りを書くことに慣れてから、相談記録へ進みます。貸付は、AIを使える場面を最初から限っておく領域です。

どの領域から始める場合でも、法人として入れてはいけない情報の線は先に引いておきます。線の引き方は社会福祉法人がChatGPTに入れてはいけない情報の一覧に、規程の条文の例は法人のAI利用規程の作り方にまとめています。

広報紙と募集の文章は、AIにどこまで任せてよいか

広報は、下書きの大部分をAIに任せられる領域です。行事の日時と場所、伝えたいこと、読んでほしい人を箇条書きで渡せば、広報紙の記事やボランティア募集の文案はすぐに出てきます。同じ内容を、高齢の方向けのやさしい言葉、子育て世代向けの短い文、掲示用の大きな字の告知に書き分けさせる使い方も向いています。

任せてはいけないのは、事実の確かめと、出してよいかの判断です。AIは、渡していない日付や連絡先をそれらしく書き足すことがあります。出す前に、日時、場所、問い合わせ先、参加の条件を、元の資料と1つずつ照らし合わせる係を決めておきます。住民や団体の名前と写真を載せるかどうかは、これまでどおり本人の了解の取り方の決まりで判断し、AIに渡す文には名前を入れずに書かせます。

広報で使い始めると、職員が自分の仕事の言葉でAIに頼む練習になります。どう頼めば使える下書きが出てくるか、どこを直す必要があるかを、個人情報に触れずに覚えられる点が、最初の領域に向いている理由です。

相談記録の要約にAIを使う前に、何を決めておくか

相談記録は、AIを使えば時間の減り方がいちばん大きい領域ですが、入る情報もいちばん重くなります。聞き取りのメモから記録の様式に沿って要約させる、担当が変わるときの引き継ぎ文を下書きさせる、といった使い方が考えられます。

使う前に確かめることは、個人情報保護委員会が令和5年6月2日に出した「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」に書かれています。個人情報取扱事業者が生成AIサービスに個人情報を含む指示を入力する場合は、特定された利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること。本人の同意を得ずに個人データを含む指示を入力し、そのデータが応答の出力以外の目的で扱われる場合は、個人情報保護法の規定に違反する可能性があるため、サービスの提供事業者が機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること。この2点です。

これを社協の事務局の決めごとに直すと、次のようになります。使ってよいサービスと設定を法人が決め、入力した内容が学習に使われないことを利用規約と設定で確かめる。氏名、住所、電話番号、家族の名前は記号に置き換えてから入れる。記号と本人の対応表は、AIに渡すファイルとは別に、担当者だけが開ける場所に置く。AIが出した要約は下書きとして扱い、聞き取った本人が事実と食い違いがないかを確かめてから記録として確定する。何を記号にするかの決め方は福祉現場の記号化ルールに書いています。

相談記録の流れ

AIに渡すのは、記号に置き換えた後の聞き取りメモだけ

  1. 聞き取る相談者の話をメモに残す人
  2. 記号に置き換える氏名、住所、電話番号、家族の名前。対応表は別の場所に置く人
  3. 要約させる法人が認めたサービスで、記録の様式に沿って整理するAI
  4. 確かめて確定する事実と食い違いがないかを見て、見立てと方針は人が書く人
AIが受け持つのは真ん中の1段だけです。記録の責任は、聞き取った職員が持ち続けます。出典:個人情報保護委員会 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(令和5年6月2日)

もう1つ、要約させてはいけない部分があります。支援の見立てと方針です。相談者がどう困っていて、どの制度や機関につなぐかは、相談を受けた職員が判断し、その判断として記録に残します。AIには事実の整理までを任せ、見立ての欄は人が書く、と様式の上で分けておくと、記録の責任の所在がぶれません。

生活福祉資金の貸付で、AIに任せてはいけないことは何か

厚生労働省の生活福祉資金貸付制度のページでは、実施主体を都道府県社会福祉協議会とし、問い合わせは住んでいる地域の市区町村社会福祉協議会で受けると案内しています。対象は、必要な資金を他から借りることが困難な低所得者世帯(市町村民税非課税程度)、障害者世帯、65歳以上の高齢者世帯です。市区町村社協の窓口は、困っている人が最初に来る場所になります。

AIに任せてはいけないのは、貸付の可否の判断と、判断につながる振り分けです。厚生労働省が令和5年9月26日に示した、新型コロナウイルス感染症の影響による特例貸付(令和2年3月から令和4年9月まで実施)の問答集vol.28では、緊急小口資金について、一律に一定の額や割合以上の収入減少をもって貸付の決定を行ったり、貸付の理由を限定したりすることは不適当とし、相談に訪れる方の状況を丁寧に聞き取って柔軟に貸付を行うよう求めています。これは特例貸付の運用についての問答ですが、相談者の事情を一人ずつ聞くという考え方は、窓口の仕事の基本でもあります。AIに点数をつけさせて振り分ける使い方は、この考え方と合いません。

貸付の窓口での分かれ道

可否の判断につながる仕事には、AIを使わない

その仕事は、貸付の可否の判断か、判断につながる振り分けか
あたるときAIを使わない相談者の状況を一人ずつ聞き取り、人が判断する
あたらないときAIで下書きしてよい制度の案内文、書類の確認の一覧、償還の案内の文案。制度の数字は人が書き入れる
点数をつけて振り分ける使い方は、一律の基準で決めることを不適当とした問答集の考え方と合いません。出典:厚生労働省 特例貸付の運用に関する問答集 vol.28(令和5年9月26日)

貸付でAIが役に立つのは、判断の外側の仕事です。制度の仕組みを相談者に分かる言葉で説明する案内文、相談の前に用意してもらう書類の確認の一覧、償還の時期を知らせる文案がこれにあたります。どれも、個人の情報を入れずに作れます。

注意したいのは、制度の数字をAIに答えさせないことです。たとえば緊急小口資金は、厚生労働省の貸付条件等一覧で10万円以内、無利子、連帯保証人は不要とされていますが、こうした条件は見直されることがあります。AIは古い情報や別の資金の条件を混ぜて答えることがあるため、案内文に入れる数字は、必ず厚生労働省の一覧と都道府県社協の案内で確かめた値を人が書き入れます。

事務局長と理事会は、始める前に何を決めるか

職員に使わせる前に、法人として決めておくことは5つあります。これが決まっていないまま始めると、職員ごとに使い方がばらつき、何かあったときに誰の責任で何を入れたのかが分からなくなります。

  1. 使う領域と順番。まず広報から、相談記録はいつから、貸付ではどの文書だけ、と領域ごとに始める時期を決めます。
  2. 使ってよいサービスと設定。法人として認めるサービスを決め、入力した内容が学習に使われないことを利用規約と設定で確かめ、その確認の記録を残します。
  3. 入れてはいけない情報の線。個人を特定できる情報は入れない、相談記録は記号に置き換えてから、貸付の判断の材料は入れない、と領域ごとに書きます。
  4. 確かめる人と確定する人。AIの下書きを誰が確かめ、誰の名前で外に出すか、記録として確定するかを決めます。
  5. 受託事業の扱い。自治体から受託している事業でAIを使う場合は、委託契約の個人情報の条項を確かめ、必要なら委託元に確認します。

この5つを1枚にまとめ、事務局の会議で確認したうえで、必要に応じて理事会に報告します。年間の計画として理事会に諮る場合の組み方は理事会に出すAI導入の12か月計画に、起案書の書き方はAI導入の稟議が理事会で通らない理由と、通る起案書の書き方に書いています。

事務局の会議に出す1枚

5つの決めごとを、この形で1枚にまとめる

生成AIの使い方の決めごと(事務局の会議用)

使う領域と順番広報から。相談記録はいつから、貸付はどの文書だけか
サービスと設定法人が認めるサービス名。学習に使われない設定の確認の記録
入れない情報個人を特定できる情報、貸付の判断の材料
確かめる人下書きを誰が確かめ、誰の名前で出すか、記録として確定するか
受託事業委託契約の個人情報の条項。委託元への確認の要否

決まっていない欄があるうちは、その領域では使い始めません。

事務局の会議で確認したうえで、必要に応じて理事会に報告します。職員ごとの使い方のばらつきを防げます。

よくある質問

無料で使える生成AIから試してもよいですか。
個人情報を一切入れない広報の下書きであれば、試しに使ってみる範囲として考えられます。相談記録のように個人の情報が入る仕事は、入力した内容が機械学習に使われないことを、利用規約と設定で確かめたサービスに限ってください。個人情報保護委員会の令和5年6月2日の注意喚起も、この確認を求めています。
生活福祉資金の貸付の可否を、AIに判定させることはできませんか。
勧めません。厚生労働省の特例貸付の問答集では、一律に一定の額や割合以上の収入減少をもって貸付を決めることや、貸付の理由を限定することは不適当とし、相談に来た方の状況を丁寧に聞き取るよう求めています。点数や基準で機械的に振り分ける使い方は、この考え方と合いません。AIは制度の案内文や書類の確認の一覧づくりに使い、可否は人が判断します。
自治体から受託している事業の記録にも使えますか。
使う前に、委託契約書と仕様書の個人情報の取扱いの条項を確かめてください。外部のサービスに情報を出すことや、再委託にあたるかどうかの扱いは、契約ごとに違います。迷うときは委託元の担当課に、どのサービスをどの設定で使うかを伝えて確認しておくと、後から問題になりにくくなります。
民生委員やボランティアの方にも使ってもらってよいですか。
まずは事務局の職員の中で、決めたルールが守られるかを確かめてからにしてください。職員以外の方に広げる場合は、どの仕事に、どのサービスを、どの情報まで使ってよいかを別に決め、説明の機会を設けます。相談に関わる情報を扱う方には、職員と同じ線を守ってもらう必要があります。

まとめ

社協の仕事の多くは文章を書く仕事で、生成AIが入る余地は広くあります。ただし、入る個人情報の重さとAIの誤りの影響は、広報、相談記録、貸付の順に大きくなります。広報で職員が慣れ、相談記録は記号に置き換えて要約までを任せ、貸付は判断に使わず案内文と書類の確認に限る。この順で進めれば、住民の情報を守りながら事務局の時間を空けられます。

次の事務局の会議に持っていくものを1つ選ぶなら、5つの決めごとのうち、使う領域と順番の1行です。そこが決まれば、残りの4つは広報から始めながら決めていけます。

出典

いずれも2026年10月17日に内容を確認しています。生活福祉資金の条件や手続きは見直されることがあるため、実際の案内は厚生労働省の一覧と所在地の都道府県社会福祉協議会の案内で必ずご確認ください。

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理事会で説明する1枚、職員向けの生成AI利用ルール、導入前チェックリストの3点をまとめた資料セットを、公式LINEかメールでお渡しします。この記事の5つの決めごとと合わせて、御法人の名前と規程に置き換えてお使いください。

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最終更新:2026-10-17

菅
菅野 竜輔(かんの りゅうすけ)/ 合同会社サン 代表社員
介護職、施設長、ケアマネジャー、地域包括支援センター、生活困窮者支援を経験。現在は社会福祉法人と福祉事業者向けに、生成AIの導入と定着の伴走をしています。本記事は社会福祉法(e-Gov法令検索)、厚生労働省の生活福祉資金貸付制度のページと貸付条件等一覧、特例貸付の問答集(令和5年9月26日)、個人情報保護委員会の生成AIサービスの利用に関する注意喚起(令和5年6月2日)を確認のうえ、AIを利用して作成し、人が事実確認と加筆を行っています。記載は2026年10月17日時点で公開されている情報に基づいています。
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