どれから頼むかは、法人がいまどの段階にいるかで決まる
研修、顧問、開発は、何を基準に選び分ければいいのか
選ぶ基準は、法人がいまどの段階にいるかです。生成AIをまだ職員がほとんど触っていない段階なのか、使い始めてはいるが毎月の仕事が軽くなっていない段階なのか、ある作業のやり方が決まっていて、それを人の手から外したい段階なのか。この3つのどこにいるかで、頼む相手の形が決まります。
研修は、知ってもらうための形です。何ができて何をしてはいけないかを、職員が同じ日に同じ言葉で聞く。それで役目を終えます。顧問は、決めた業務を毎月一緒に回しながら、職員だけで回せる状態まで持っていく形です。開発は、手順が決まった作業を、毎回人が手でやらなくて済む仕組みにする形です。
よくある失敗は、段階に合わない形から頼むことです。職員が触ったこともない段階でシステムを作っても、確かめる人がいないので使われません。逆に、手順まで決まっている作業に研修を重ねても、次の月の仕事は軽くなりません。外部に声をかける前に、法人がどの段階にいるかを、理事長と施設長の間で一度言葉にしておくと、相手との話が早くなります。
頼んだあと、法人には何が残るのか(比較表)
3つを、向いている段階、頼んだあとに残るもの、法人が用意すること、向かない状態で並べると、次のようになります。
| 形 | 向いている段階 | 頼んだあとに残るもの | 法人が用意すること | 向かない状態 |
|---|---|---|---|---|
| 研修 | 職員がまだ生成AIをほとんど触っていない。法人としての使い方の決まりを伝えたい | 職員の知識と、同じ日に同じ説明を聞いたという共通の土台 | 参加者を集める日程、法人として入れてはいけない情報の線 | 研修のあと、誰がどの業務で使うかが決まっていない |
| 顧問 | 記録、会議録、加算の書類など、毎月決まって出る業務を軽くしたい | 職員だけで回せる業務の手順と、法人の使い方のルール | 対象にする業務を1つ、現場で受け持つ職員、見直す日 | 任せる業務が決まらない。現場で受け持つ職員を出せない |
| 開発 | 手順が決まった作業を、毎回人がやらずに済む形にしたい | 仕組みそのものと、その使い方の説明書 | 紙に書ける作業の手順、使う職員、作ったあとに直す窓口 | 手順がまだ人によって違う。完成したものを誰が直すかが決まっていない |
表の右から2列目を見てください。どの形も、法人の側に用意するものがあります。研修なら日程と線引き、顧問なら業務と担当者、開発なら手順と直す窓口です。これが用意できない形は、いま頼んでも期待した結果になりにくい形です。毎月の契約か1回の依頼かという費用の切り方は顧問契約とスポット依頼、どちらが得かにまとめています。
研修から頼むのは、どんな法人か
研修から始めて合うのは、職員の多くが生成AIを使ったことがなく、法人としての使い方の決まりもまだ伝わっていない法人です。研修の目的は、職員全員が同じ説明を聞き、何をしてよくて何をしてはいけないかの線を同じ言葉で持つことにあります。
その線の中身として外せないのが、個人情報の扱いです。個人情報保護委員会は令和5年6月2日の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」で、個人情報取扱事業者が生成AIサービスに個人情報を含む指示を入力する場合は、特定された利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認するよう求めています。研修で職員にこの線を伝えるには、その前に法人として、どのサービスを使ってよいか、利用者の名前や病名を入れてよいかを決めておく必要があります。決まっていないまま研修を開くと、講師の一般論を聞いて終わり、職員は自分の職場で何をしてよいのかが分からないまま戻ります。
研修を頼むときは、順番も考えてください。職員より先に理事長と施設長が受け、法人として決めることを決めてから職員研修に進むほうが、現場が迷いません。研修の選び方と講師に聞くことは理事長・施設長が最初に受ける生成AI研修の選び方に書いています。
研修が向かないのは、すでに職員の一部が日常的に使っていて、困っているのが使い方ではなく、どの業務をどう変えるかである法人です。この場合、知識を足しても毎月の仕事は変わりません。次の顧問の形のほうが合います。
顧問から頼むのは、どんな法人か
顧問から始めて合うのは、記録、申し送り、会議録、加算の書類、事故報告のように、毎月決まって出てくる書き物に職員の時間が取られていて、それを軽くしたい法人です。研修は1回で終わりますが、書き物は毎月出てきます。毎月出てくる仕事を、毎月一緒に回しながら手順にしていくのが顧問の形です。
顧問を頼む前に、法人が決めておくことは3つです。1つは、最初に対象にする業務を1つに絞ること。2つは、その業務を現場で受け持つ職員を名前で決めること。3つは、いつ見直すかを決めることです。業務が絞れていないと、顧問は毎回の打ち合わせで話題を探すところから始まり、手順が残りません。
どの業務から始めるかを決めるときは、厚生労働省が示している介護分野の生産性向上の進め方が参考になります。手順1で取り組むチームとリーダーを決めて経営層から取組の開始を宣言し、手順2で現場の課題を見える化します。見える化には、職員が課題と感じていることを集める課題把握ツールと、タイムスタディで業務時間を測る業務時間見える化ツールが公開されています。顧問に頼む前に、どの業務に時間がかかっているかを一度測っておくと、顧問と最初に話す中身がそのまま決まります。
顧問が向かないのは、任せたい業務がまだ1つも挙がらない法人と、現場で受け持つ職員を出せない法人です。外の人が毎月来ても、法人の中で引き取る人がいなければ、手順は残りません。
システム開発から頼んでよいのは、どんなときか
開発から頼んでよいのは、作りたい作業の手順を、職員が紙に書き出せるときです。誰が、何を見て、どの順番で、何を作るか。これが人によって違わずに書けるなら、その手順を仕組みにして、毎回人がやらずに済む形にできます。
作業の手順を、職員が紙に書き出せるか
手順が書けない段階で開発を頼むと、作る側は打ち合わせで聞いた一人のやり方に合わせて作ります。できあがったものが他の職員のやり方と合わず、結局使われない、ということが起きやすくなります。手順が書けないなら、先に顧問か、法人の中での話し合いで手順をそろえるのが順番です。
もう1つ決めておくのは、できたあとに誰が直すかです。様式が変わる、報酬の改定で書類の項目が変わる、使っているサービスの画面が変わる。仕組みは作ったあとも手直しが要ります。開発を頼むときは、完成したあとの手直しを誰に頼むのか、その費用をどう見込むのかを、見積りの段階で確かめてください。機器やソフトの導入に都道府県の補助を使えるかどうかは、生成AIが対象かを含めて都道府県の要綱によります。確かめる順番は介護テクノロジーの補助と生成AIのつなげ方にまとめています。
どれにも決めきれないときは、何から始めればいいか
理事長と施設長の間で、法人がどの段階にいるかの見立てが割れることはよくあります。その場合は、どれかを選ぶ前に、職員から困りごとを出してもらう場を半日つくってください。何に時間を取られているかを職員自身の言葉で出してもらい、その場で生成AIを触ってもらうと、法人がどの段階にいるかが見えてきます。
選ぶ前に半日、職員から困りごとを出してもらう
- 困りごとを出す何に時間を取られているかを、職員自身の言葉で出してもらう職員
- 触ってみるその場で生成AIを触り、記録や帳票で試す職員
- 3つに振り分ける何ができるか知らないなら研修、毎月の書類が重いなら顧問、同じ手順の繰り返しなら開発の候補理事長と施設長
- 相手を選ぶ何をしてほしいかを、法人の側から伝えて見積りを取る理事長と施設長
出てきた困りごとは、3つに振り分けられます。そもそもAIで何ができるのかを知らない、という声が多ければ研修です。毎月の記録や書類が重い、という声が多ければ顧問です。毎回同じ手順で同じものを作っている、という声が具体的に出てくれば開発の候補になります。当社のAI活用 出前講座も、半日お伺いして最初に職員の皆さまから困りごとを出していただき、御施設の記録や帳票で試す流れにしています。外部に頼まず法人の中で行う場合も、困りごとを出す、触ってみる、振り分ける、の順番は同じで構いません。
この場は、どの形を頼むかを決めるための材料集めです。困りごとが出そろってから相手を選ぶと、見積りを取るときに、何をしてほしいかを法人の側から伝えられます。
契約の前に、理事長と施設長は何を決めておくか
研修、顧問、開発のどれを選ぶ場合も、契約の前に法人として決めておくことは共通しています。決めずに契約すると、相手の提案に合わせて法人の方針が決まってしまいます。
- いまの段階。知ってもらう段階、毎月の業務を軽くする段階、仕組みにする段階のどこにいるかを、理事長と施設長の言葉で1行に書きます。
- 入れてはいけない情報の線。どのサービスを使ってよいか、利用者の名前や病名を入れてよいかを、法人として先に決めます。線の引き方は社会福祉法人がChatGPTに入れてはいけない情報の一覧にあります。
- 最初の1つの業務と受け持つ職員。顧問や開発を頼むなら、対象の業務を1つと、現場でそれを引き取る職員を名前で決めます。
- 見直す日と見るもの。いつ、何を見て続けるかを判断するかを決めます。見るものは、対象の業務にかかる時間と、職員だけで回せているかの2つで足ります。
この4つを1枚にまとめておけば、外部の事業者を比べるときの物差しになり、理事会で説明するときの資料にもなります。法人全体として生成AIを入れる順番は社会福祉法人が生成AIを入れる順番に、事業者を選ぶときの確認項目はAI支援事業者の選び方に書いています。
よくある質問
- 研修と顧問を同時に頼んでもよいですか。
- 頼めますが、順番を決めておかないと、職員から見ると同じ話を2回聞くことになります。顧問を頼むなら、職員向けの研修は顧問の最初の数か月の中に入れてもらい、法人の決めた業務と様式で行ってもらう形が無駄がありません。研修を別の会社に頼む場合は、研修で扱う使い方と、顧問で決めた法人のルールが食い違わないかを事前に確かめてください。
- システムを作ってもらえば、研修や顧問は要らないのではありませんか。
- 手順が決まっていて、使う職員がその手順に慣れている業務なら、作るだけで回ることもあります。ただ、生成AIを使う仕組みは、出てきた下書きを職員が確かめて直す前提で作られます。確かめる人と、何を入れてはいけないかが決まっていないまま仕組みだけ入れると、使われなくなるか、決まりの無いまま使われるかのどちらかになりやすくなります。
- 顧問は、どのくらいの期間で効き目を判断すればよいですか。
- 契約の前に、見直す日と、その日に何を見るかを決めておいてください。見るものは、最初に決めた1つの業務にかかる時間と、職員だけで回せているかの2つで足ります。季節ごとに出る書類もあるため、1年を通して見ないと分からない業務もあります。契約期間と見直しの時期は事業者ごとに違うので、見積りの段階で確かめてください。
- 研修費や開発費に補助金や助成金は使えますか。
- 制度によって対象が違い、生成AIの研修や開発が対象になるかは、それぞれの要綱と担当窓口の判断によります。研修であれば人材育成の助成金、機器やソフトの導入であれば都道府県の介護テクノロジー導入支援の補助が候補になりますが、対象経費と申請の時期は必ず要綱で確かめてください。交付が決まる前に契約した分は対象外になる制度が多いため、契約の日付には特に気をつけてください。
まとめ
研修、顧問、開発は、頼んだあとに法人に残るものが違います。研修は職員の共通の土台、顧問は職員だけで回せる業務の手順、開発は仕組みそのものが残ります。職員に知ってもらう段階なら研修、決まった業務を毎月軽くしたいなら顧問、手順が紙に書ける作業を仕組みにしたいなら開発から頼みます。
どれにも決めきれないなら、まず半日、職員から困りごとを出してもらってください。出てきた声を3つに振り分ければ、どこから頼むかは法人の側で決められます。
出典
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日) 個人情報保護委員会のページ(個人情報取扱事業者における注意点)
- 厚生労働省「介護分野における生産性向上の取組の進め方」 厚生労働省のページ(手順1の準備、手順2の課題の見える化、課題把握ツールと業務時間見える化ツール)
- 合同会社サン「AI顧問(福祉法人向け)」 サービスのページ、「AI活用 出前講座」 サービスのページ(当社の顧問と出前講座の進め方)
いずれも2026年10月18日に内容を確認しています。補助金と助成金の対象や時期は制度ごと、年度ごとに変わるため、実際の手続きは所管の要綱と窓口で必ずご確認ください。
理事会に持っていける資料セットをお渡しします
理事会で説明する1枚、職員向けの生成AI利用ルール、導入前チェックリストの3点をまとめた資料セットを、公式LINEかメールでお渡しします。この記事の契約の前に決める4つと合わせて、御法人の名前と規程に置き換えてお使いください。
▶ 公式LINEで資料セットを受け取るご質問は メールでのお問い合わせ からどうぞ
毎月ご一緒する形は AI顧問のご案内(月60,500円から・税込)をご覧ください
半日の出前講座
御施設の記録や勤務表をそのまま画面に出して、職員の皆さまと一緒にAIを触ります
半日(3時間ほど)お伺いし、その日のうちに現場の仕事を1つ軽くすることを目標に進めます。1回 110,000円(税込・交通費込み)。伴走顧問に進まれた場合は、初月の顧問料に全額充当します。
出前講座の流れと申し込みを見る最終更新:2026-10-18
